【RAYS】超超ジュラルミンへの挑戦〜TE037 DURA

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170410-RAYS-16.jpg東京オートサロン2017でひときわ注目を集めたのが、"超超ジュラルミン"製の「VOLK RACING TE037 DURA」。これをプロデュースした山口浩司氏がRAYSの挑戦を語った。
----なぜいま"超超ジュラルミン"なのですか?

RAYSは、ホイールメーカーとして常にチェレンジし続けるべきだと、僕は思っています。お客さまの期待に応えるため、安全や信頼性を高めるために企業努力を続けるのは当然のことです。といってもなかなか目に見るものではないので、レース活動や夢のある商品づくりを通して、伝えていく必要があります。

----WEC(FIA世界耐久選手権)やSUPER GTへのホイール供給は、そういった考えに基づくものですね。

マグネシウム鍛造ホイールでWECのマシーンが要求する性能をどう高めていくのか、また、SUPER GTのGT500クラスでは一般的なアルミ鍛造ホイールの素材である「A6061」でどのように高性能を突き詰めるか、そんな取り組みを行っています。

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----"超超ジュラルミン"もチャレンジのひとつということですか?

一般的なアルミ素材以外を使ったホイール製造はチャレンジのテーマのひとつです。「A7075」と呼ばれる超超ジュラルミンは、流通しているアルミ素材のなかでは"王者"というべき性能の持ち主です。金属の強度を計る指標として引っ張り強度というものがありますが、鋳造で使われている「A356」が240〜280MPa程度、ふだん鍛造ホイールで使っている「A6061」がだいたい340〜380MPaであるのに対して、A7075の引っ張り強度は560〜580MPaと、とても強度があるのです。

-----"超超ジュラルミン"は新しい素材なのですか?

もともとは日本の「零戦」で使われていたものですが、戦後は進化が止まっていました。その理由のひとつが、強度はあるものの、錆びやすかったり、もろかったりと、扱い難い性格の持ち主なのです。しかし、アルミホイール屋としては「このアルミの王者をなんとかできないものか?」と常々思っていて、6年ほど前から本格的に開発を進めてきたわけです。

----商品化にあたってはどんな課題を乗り越えなければならなかったのですか?

ひとつは"応力腐蝕割れ"という問題があります。わかりやすくいうと、おにぎりと鏡餅の違い。鏡餅は時間が経つと表面にパチパチと亀裂が入り、最終的には割れてしまいますね。それは叩いて固めているので内部に応力が集中しているからです。でも、餅ほど力を加えずにつくるおにぎりは、そういう割れ方はしないんです。

この応力腐蝕割れを克服するために材料メーカーと研究を重ねた結果、応力腐蝕割れを徹底的に排除したRAYS独自のハイピュア材というものを用意してもらうことができました。超超ジュラルミンはアルミに、少量の亜鉛、マグネシウム、銅を混ぜたものですが、まずはアルミそのものの純度を高め、そこにバランス良く他の素材を混ぜることで応力腐蝕割れを可能なかぎり排除できました。同時に、純粋なアルミに近づいたことで、防錆性も鍛造ホイールに使うA6061と遜色のないレベルになり、素材として最高のものができあがったのです。

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----硬いということは成型しにくいということですよね?

硬くて延びないので、鍛造には向いていません。だからといって、マシニング加工で削って成型してしまうと、圧力を加えて成型する鍛造に比べると2割くらい強度が落ちてしまいます。これを粘土細工にたとえると、粘土の塊をヘラで削ってつくるよりも、型でギュッと押し固めたほうが、持ち上げたときにしっかりしてます。せっかく王者の超超ジュラルミンを使うのなら、可能なかぎりその持てる性質を製品に注ぎ込みたい。そこでRAYSは、このTE037 DURAをつくるうえでも独自のデザイン成型金型鍛造工法にこだわりました。もちろん、難しい素材と難しい工法との組み合わせですから、さらに難しいわけですが、そこはレイズエンジニアリングの技術者魂で克服しました。

----どのくらい軽量に仕上がったのですか?

写真の10J×20インチのTE037 DURAで9.5kgです。RAYSの同サイズのアルミホールが10.5kgくらいですから、さらに約1kgの軽量化に成功しました。軽くするだけならあと1.5kgくらい減らしてもテストは通りますが、RAYSが目指すのは、たとえばAudi RS 5に履かせてサーキットを走らせても音を上げない性能です。純正ホイール同等、あるいはそれ以上の性能を満たすのがRAYSの責任でもあるわけです。

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----RAYSの定番商品である「TE37」ではなく「TE037」を名乗る理由は?

TE037は、TE37の6本スポークデザインを継承していますが、TE37ではありません。しかし、軽量化を図るため、また強さを表現するためにTE37と同じ6本スポークを採用しているわけですから、37の前にゼロを加えることで、37を破る新シリーズを表現しました。

----スポークの横に穴があるデザインが印象的ですね!

軽量化のためにスポークの横に"ウエイトレスホール"を設けました。TE037の特徴としては、十分なインパクトがあるでしょう。ただ、薄く硬い超超ジュラルミンに横から穴をあけようとすると、共振によってブレるんです。それを防ぐ工夫が必要でしたが、ここから先は特許を申請しましたので、詳しくはお話できません(笑) これ以外にも、剛性を保ったまま軽量化が図れる"ウエイトレスポケット"を設けていますが、コンピューター解析に基づいたものですから、その形状にはすべて意味があります。

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----税抜き価格は約26万円ということですが......。

仮にショーモデルとしてワンオフでつくったとしたら、1本400万円くらいになると思います。そんな金額で売るわけにはいきませんから、金型をつくり、ラインを構築する必要がある。非常に高いレベルの技術も必要になります。それでいて、今回は限定600本の生産で、これは弊社の年間販売本数の1%にも満たないわけですから、約26万円でも割が合いませんが、アルミホイールメーカーとしての使命として、技術力を示すためにはこういった取り組みも必要でしょう。

オートサロンの会場で、某アルミホイールメーカーの社長が「RAYSは本当にこのホイールを売るつもりなのか」と語ったそうです。単につくって展示するのと売るのとでは大きな差があるのですよ。

われわれが独自のデザイン成型金型鍛造工法にこだわっているのは、高性能をより身近な金額で提供するためですので、次のステップではもうすこし手頃な金額で提供したいと思っています。

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----今回の取り組みによって、あらたな課題は見えてきましたか?

たとえば、超超ジュラルミンの"伸びしろ"をいかに伸ばしていくか。また、通常のA6061の素材はやり尽くした感がありましたが、このTE037の開発で、やるべきことが見えてきました。軽量化やデザインへの飽くなき挑戦は続きます。近い将来、「あのとき、伸びしろがあるといったのはこのことか!」というものが出てくると思いますので、楽しみに待っていてください。

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(Text & Photos by Satoshi Ubukata)

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