アウディ・デザインはどこへ行くのか?

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111028ogu02.jpgそろそろアウディの話をしよう――。

最近、ボクはアウディのデザイン(エクステリア)がどういう方向に行くのかに、強い関心を持っている。特に、アウディが属するプレミアムセグメントのなかで、どうやってアイデンティティ、個性を際立たせていくのか、というあたりに興味を持つ。
111028ogu03.jpg■シングルフレームグリルの意味

アウディがプレミアムセグメントの第三勢力として注目を集め始めたのは、'80年代に入ってからだろうか。Cd値0.30の3代目100、Cd値0.29の3代目80が、'80年代の前半に相次いで登場、その徹底したフラッシュサーフェス化が生んだ滑らかなラインは、きわめて鮮烈な印象を与えた。それまでのジウジアーロ・デザインを祖とする折り紙細工的デザインと決別したエアロフォルムは、機能美というものを強く意識させて、メルセデスやBMWに飽き足らない富裕層を振り向かせた。

まだ生産量こそ少ないものの、プレミアムセグメントの一角を確実に占めると認知されたのは、'90年代半ばに名称が"A"シリーズに変更されてからだろう。100はマイナーチェンジでA6に、80はフルモデルチェンジでA4となり、そのさらに洗練された空力デザインが先進性、知的レベルの高さも感じさせて、いよいよ時代をリードする人達に受け入れられていくことになる。

111028ogu04.jpgアウディが自らのポジショニングをプレミアムセグメントと定め、メルセデスやBMWと戦う姿勢をハッキリと示したといえるのは、シングルフレームグリルだ。そのアイディアを出したのは、3代目A6をデザインした日本人デザイナー、和田智氏。誰にでも受け入れられるおとなしいダブルフレームグリルから、あるいは拒絶反応を起こすやもしれない強烈なシングルフレームグリルへの移行。それは、積み重ねられた実績に裏打ちされたアウディの自信を表すものだったともいえる。

大雑把にいって、アウディはこうしてデザイン上でもプレミアムセグメントの仲間入りを果たしたわけだ。

■ウエッジからホリゾンタルへ

このところ、アウディ・デザインは、そのエレガントさにおいてメルセデスやBMWを大きく引き離しているといってよい。この観点では、素晴らしいものがある。ドイツの3つのプレミアムブランドを表現する言葉として使われるのは、メルセデスが"トラディショナル"、BMWが"スポーティ"、そしてアウディが"コンテンポラリー"とされるが、その現代性をキーとするアウディが色濃く優雅さを漂わせているのは、なんとも面白い。

111028ogu06.jpgそれがどのあたりから出てきたかを考えると、やはり、和田智氏デザインの、前のA6だと思う。和田氏のA6は、まさにアウディデザインのひとつのマイルストーン。ボディサイドのロワボディ上側の、ヘッドライト後端からスタートするキャラクターラインを前傾させ、下側の前後のホイールアーチを結ぶキャラクターラインも前傾させて、さらに強い視覚的ウエッジを作り出していた。弓なりのルーフラインを持つクーペのようなボディフォルムにウエッジシェイプを組み入れた、非常に凝った、繊細なデザインだった。

111028ogu07.jpg和田氏のA6が示した方向をさらに突き詰めて、熟成させたのが新型A4といえるが、これまでのものよりさらにエレガントが強調されているように見えるのはなぜか。個人的な見解としては、上側のキャラクターラインをあまり前傾させずに、ほぼ水平(ホリゾンタル)として、意識的にクラシカルな装いを増しているからだと思われる。水平の視覚的な安定感は格調を生み、その後方に陰影のような残像を残す。スカートを引きずるがごとく、だ。

新型A4の場合、セダンよりもアバントのほうが美しいと思う。ややオーバーな表現かもしれないが、そのフォルムはワゴンデザインの黄金比のようなものを具現化しているように思え、見る度に感心する。

そこで、新型のA6なのだが......。

111028ogu09.jpg■アウディも、ただのプレミアム?

少し気になっている点がいくつかある。新型A6は、全体の基調が水平になっているのはよいとして、ディテールが気になる。グリルの目が荒くなったのをはじめ、フロントビューにはこれまでのアウディにはない骨っぽさが感じられる。それに、サイドの上側のキャラクターラインのその造形はややエッジが強い。パネルの面は滑らかでとてもきれいだが、少しエグイ感じになっている。これらの演出がいままでのアウディとは違う。

こういってしまってはなんだが、現在のプレミアムセグメントのデザインは、個性の強さがウリ。より率直にいえば、やや悪趣味になりがちの、いわば、どや顔のようなものといえるかもしれない。メルセデスなどは、かつての格調がスッカリ失われて、筋骨隆々のマッシブさばかり際立つ。BMWはしかし、まだいい。ここのところは彫りの深さが目立ち、重く見えて仕方なかったが、最近のデザインはまたかつての軽快さを取り戻しつつあるように思える。

111028ogu08.jpgそうしてみると、新型のA6は、よりプレミアムセグメントらしいデザインになっているといえるわけだが、果たしてアウディはそれでいいのだろうか、という疑問も湧く。悪趣味になってしまってもいいのだろうか。気になる。アウディは、TTがデビューしてから特に、ドイツ伝統のデザインである"バウハウス的デザイン"の知的要素がそこかしこに感じられて、そこにただのプレミアムではないというアドバンテージがあったように思うのだが、新型A6はどうなのか......。

和田氏の意見を聞いてみたいものだ。

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Author:小倉 正樹

1950年生まれ。伊藤忠オート、日刊自動車新聞社を経て自動車専門誌「LE VOLANT」編集部に。同誌編集長、「VW GOLF FAN」編集長を経てフリーに。

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